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 「キャンディ・キャンディ」(水木杏子原作・いがらしゆみこ画)というマンガに親しんだ人は多いと思います。私も中学生くらいのみぎり、楽しく読んでいました。アニメ化された時の主題歌は、今でもカラオケに行くと歌い出す友人がいます。 
 最近になって、昔のマンガなどのキャラクターがリバイバルすることが多く、このマンガのキャラクターを使ったお菓子などが出てきました。 
 ところが、キャラクターの使用許可を、マンガ家のいがらしゆみこさんが独断で下し、原作者の水木杏子さんになんの挨拶もなかったというので、水木さんが著作権侵害だとして提訴していました。 
 
 私も結構著作権のうるさい世界にいるものですから、この訴訟には興味を惹かれました。 
 判決が昨日下されたのですが、裁判所の判断としては、原作付きのマンガに関しては、その原作者にもキャラクターの著作権が認められるとして、水木さんの勝訴となったようです。 
 これに対して、いがらしさん側は、 
 
 ──マンガ家の独創性を認めない偏った判決だ。 
 
 と不快感を表明しています。控訴するかどうかはまだわかりませんが、このおふたりが一緒に仕事をすることはもうないでしょうね。 
 こういう問題は今後も発生しかねないものであり、難しいところです。 
 ヴィジュアルなキャラクター造形については、確かにマンガ家の領分であり、ストーリーと無関係にキャラクターのみを商品に用いる場合、原作者は無関係であるという考え方も成り立たないことはありません。 
 しかし一方、そのキャラクター造形も、原作あってこそ生まれたものであると考えれば、原作者の権利が認められて然るべきだとも思えます。 
 
 アニメ化された時には、両方の取り分がきちんと定められていたのでしょうし、その当時のキャラクター商品についても、両者に版権料が入っていたに違いないのですが、それから20年以上を経たため、そのあたりが曖昧になってしまったのでしょう。 
 私自身としては、やはり両方の権利が認められるべきだろうと思います。ヴィジュアルがどうあろうと、キャラクターが原作者とマンガ家の共同制作物であることは動かせないのではないでしょうか。水木さん側は何もいがらしさん側に権利がないと言っているわけではなく、こちらにも応分の権利があるべきだと言っているだけなので、マンガ家側もあまりかたくなにならず、認めてあげればよいと思うのですが。 
 
 ただ、私もややおもむきは異なりますが、似たようなトラブルに接したことがあります。 
 ある詩をテキストにして合唱曲を作ったのですが、その詩人がクレームをつけてきたのでした。 
 着手前に許可をとらず、ほぼ曲ができた頃になって連絡をした私も悪かったのですが、それまでが大体それで通ってきたものですから、同じようにしたまでのことでした。しかし詩人の方は、勝手に使われたと感じてしまったようです。 
 詩の使用料というようなことまで言い出したので、面食らいました。それまで、テキストとした詩の使用料を請求されたことなどありません。もちろん、楽譜が出版されたり、CDになったりするのであれば、作詩者にも一定の割合の取り分が認められていますが、作曲者が作詩者に使用料を支払わなければならないというような話は初耳でした。そんなことになったら、容易に歌など作れなくなってしまうな、と狼狽したものです。 
 幸いその時は話し合いでなんとか切り抜けましたが、訴訟なんてことになっていたらえらい騒ぎでした。 
 
 そんなことを言い出せば、私の編曲した楽譜のコピーが知らないうちに出回っていて、ある大学の合唱部の定番アンコールになっていたなんて話もありますが、使用料を受け取った記憶はありません。 
 著作権というもの、大事なことは大事なのですが、なかなか難しい問題があるようです。 
 デジタル著作物の場合はもっとややこしいでしょう。プログラム自体もさることながら、CGやMIDIファイルなどがいつひっかかるかわかったものではありません。皆様もご用心を……。
 
(1999.2.26.)
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